三礼口訣(食・茶・書)貝原益軒著 元禄4年(1687) 9-8
「食・茶・書」の礼法書です。
「食礼」
茶菓子いでば。盆を右手に取り上げ、左手にうつして楊枝をとり、食らうべし。
一説に同輩の前にては。楊枝を取り直しおこし歯をさし。その楊枝を懐中すべしという。
これ古礼にありとど。楊枝は盆に入れて返すべし。歯をさするは。わが懐中の楊枝を
いだしてさすべし。或いはいう。楊枝は。亭主けづり。客 を懐にすべしと。
数寄者 お の事なり。 の饗応の時は。亭主 いれの楊枝なき物なれば。
なおをもって懐中すべきや。今世俗のすき屋の床 を。
の床をも又 の紙に をはるがごとし。皆 うべき事なるべし。
食饗の後。楊枝を以て歯をさす事。貴人の前においては。さすべからず。
同輩はくるしからず。しかれどもみだりに歯をさすは非礼なあり。若しささんと
思はば。口先をふさぐ。手を以て口を覆い歯をさすべし。手を洗い口を漱ぐ 食後の
ことなり。歯をさすべし。
「茶礼」
通い口、羽ぼうきの音する時、客かしこまる。さて、膳出ば、下に置かず、中にて
受け取りいただくべし。もし膳に楊枝あらば、菓子なきと心得べし。
ここではつまようじと房楊枝の両方の使い方が具体的にしめされている。
つまようじはいつも懐中に持っているべきことが分かる。